柔道の寝技における基本的な返し技!横帯取り返しを習得!

今回は柔道の寝技の中でも基本的な返し技である、横帯取り返しという技を紹介します。相手に対し自分が下のポジションにいる時に、相手をひっくり返して押さえ込む技です。

この技の特徴は、『不利な体勢から一気に形勢逆転して相手を押さえ込める』という点です。

数ある寝技の中でも基本的かつシンプルな技ですので、それなりに寝技の稽古を積んだ人であれば、どこかで1度は見たことがあると思います。しかしながら、基本的な技であるにもかかわらず、実際にマスターして試合で使いこなしている人はあまり見たことがなく、たまに見かけても力ずくで相手を返そうとしている人の方が圧倒的に多いです。

この技には押さえておくべき重要なポイントがたくさんあるため、一見簡単そうに見えて実はとても奥が深い技なのです。

寝技の攻防において、自分と相手の体勢が上下入れ替わることはよくあります。この技をしっかり理解していつでも使えるようにしておけば、たとえ自分が相手に対し下のポジション(不利な体勢)になったとしても、そこからすぐに相手をひっくり返して押さえ込みに行くことが可能です。

それにこの技が自由自在に使えることで、相手に「寝技に持ち込まれたら返されるかもしれない・・・。」という無言のプレッシャーを与えることもでき、精神的にも優位に立つことが可能です。身に付けて損はない技だと思います。

この技も、各ポイントの正しい理解と反復練習によって、誰でも身に付けることができます。この記事を参考に、普段の稽古から取り組んでみてはいかがでしょうか。

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1.横帯取り返しとは?

横帯取り返しについて説明していきます。先日紹介した帯取り返しと名前は似ていますが、技の掛け方は大きく異なります。

(「そもそも帯取り返しって何?どんな技??」という方は、こちら↓の記事をぜひ一度読んでみてください。立技からいきなり寝技で押さえ込む!帯取り返しを習得!)

お互い畳に腰を下した状態から仕掛け、最終的に押さえ込みにいくまでの一連の流れを紹介します。下に載せた左右2方向からのパラパラ動画を観て、相手をひっくり返すまでの過程を眺めてみましょう。

パラパラ動画 横帯取り返しの一連の流れ その1
パラパラ動画 横帯取り返しの一連の流れ その2

パラパラ動画を観て分かる通り、技を掛ける前の相手と自分の位置関係を比べてみると、相手が上で自分が下となっています。

技を掛ける方は尻を畳に付けた体勢をとり、自分のすぐ上にいる相手を左手でしっかり引きつけ、次に右手で相手の後ろ帯を取ります。その後、相手の右うでを自分の左うでですくい上げ、畳に寝ころんで相手の体を自分の体に乗せながら、両手両足を右に傾けることで相手をひっくり返します。この後、横四方固めで相手を押さえ込みに行きます。

上のポジションにいる者は、いつでも体重を掛けて押さえ込みにいける体勢です。それに対し下のポジションの者は、押さえ込もうとする相手の体重だけでなく、相手の動きにも瞬時に反応し対処しなければなりません。このため、寝技においては一般的に上のポジションが有利、下のポジションが不利と言われています。

ここで、横帯取り返しを自信を持って掛けることができれば、仮に下のポジションになったとしても、下から相手をひっくり返して押さえ込みにいくことが可能です。不利な体勢になっても冷静に相手をコントロールすることができ、ピンチをチャンスに変えて勝利に結びつけることができるというわけです。

このことから、冒頭で話した通り『不利な体勢から一気に形勢逆転して相手を押さえ込める』というのがこの技の特徴となっているのです。ただしこれも冒頭で話した通りですが、技に対する理解が浅いからか、基本的な技であるにも関わらず実際に身に付けている人はあまりいないのが現状となっています。

余談ですが、この技は最近流行りのブラジリアン柔術(※)におけるスイープと呼ばれる技術に相当します。ブラジリアン柔術には一般的な講道館柔道とは比べものにならないほど多様な寝技体系が存在し、相手を返す技だけを見ても、その種類は前者の方が圧倒的に豊富と言えます。

ルール自体が相当異なるため一概には言えませんが、ブラジリアン柔術の返し技のエッセンスを柔道に取り入れることも、自分の寝技のレパートリーを増やしていく上で有益だと思います。

※) ブラジリアン柔術
ブラジルの格闘技。日本人柔道家・前田光世がブラジルで伝えた柔道が独自に進化・発展してできたと言われている。特に寝技の技術が豊富であり、性別や年齢に関係なく気軽に始められることから、近年は超一流企業の福利厚生に採用されたり、海外セレブの間でも人気となっている。アメリカのUFCや、かつて日本で開催されたPRIDEといった総合格闘技イベントで活躍したグレイシー一族が有名。

2.横帯取り返しの掛け方とポイント

横帯取り返しの掛け方とそのポイントについて、写真を使って順番に説明していきます。柔道の寝技における基本的な技ではありますが、各ポイントを理解し実践できている人はあまりいないと思います。上のパラパラ動画も参考にしながら、しっかり読み込んで理解していきましょう。

まず下の図1のように、自分の右手で相手の左ひじ部分を握り、自分の左わき下の空間に引き込みます。同時に相手の首後ろに自分の左手を差し込み、相手をしっかり自分に引き付けます。相手の体勢を前のめりにするイメージです。

図1 両手で相手を引き付ける

相手は嫌がって背筋を伸ばし抵抗しようとしますが、それに打ち勝つようにしっかり相手の体勢を崩すようにします。特に首後ろを握った左手の引き付けが重要で、相手の左うでが自分の左わき下の空間から引き抜かれないよう、十分注意してください。

私の経験上、この引き付けが甘いと横帯取り返しに入れないばかりか、逆に有利な体勢の相手に攻められて押さえ込まれてしまうので注意してください。

次に下の図2のように自分の右手で相手の後ろ帯を取りに行きます。後ろ帯を取った後、右うでのひじと手首に力を込めることで、相手の体をさらに自分に密着させます。左手で相手の首後ろを、右手で相手の後ろ帯を握って相手をしっかり引き付け、自分と相手との隙間を無くすようにします。

図2 右手で相手の後ろ帯を取りさらに密着

ここで下の図3のように、相手の右うでを自分の左うでで下からすくい上げます。不十分な体勢の相手は右うでを畳について体の支えにしようとしますが、そこをすかさず自分の左うでですくうことで、支えを取り払ってしまうわけです。これで相手は技を掛ける方の体に乗りかかることとなり、ますます身動きが取れなくなります。

図3 左うでで相手の右うでをすくい上げる

次に自分の両足を使って相手を宙に浮かせます。下の図4のように自分の右うでは相手の後ろ帯をしっかり握ったまま畳に寝ころび、両足で相手の下半身を支えて持ち上げます。

相手は既に技を掛ける方の体に乗りかかっており、右うでの支えもありません。ここで下半身が宙に浮いてしまうことで、技を掛ける方の体に完全に乗ってしまうことになります。そのため、相手は身動きするどころか、技を掛ける方に動きを完全に支配されてしまいます。

すかさず相手を下の図4の矢印方向にひっくり返しましょう。両手両足を右へ傾けるだけで相手は簡単にひっくり返ります。

図4 両足で相手を持ち上げひっくり返す

ただし下の図5のように、ひっくり返した段階で自分の右足を相手の左ひざの内側に置き、相手の回転を止めるよう注意してください。ひっくり返した瞬間にその勢いのまま相手が回転し逃れてしまう可能性があるため、それを防止するのが目的です。

ひっくり返した後は腰をひねって足を入れ替え、横四方固めで押さえ込めば完成です。

図5 右足で相手の左ひざを押さえ横四方固めに移る

3.横帯取り返しの鉄則

最後に、技の理解を深めるため、横帯取り返しの鉄則について説明しておきます。『2.横帯取り返しの掛け方とポイント』で解説した、相手の右うでを自分の左うでで下からすくい上げる点にスポットを当ててみましょう。

相手は技を掛ける方の体に密着した状態であり、右うでの支えも無くしてしまうことで、相手はますます身動きが取れなくなってしまうとお伝えしました。この理屈は下の図6のように、脚が3本あるテーブルを想像してみると分かりやすいと思います。

図6 脚が3本あるテーブル

この3本の脚のうち、何かの拍子で1本が折れてしまったとしましょう。2本の脚で支えることは不可能ですから、テーブルは下の図7のようにバランスを崩して倒れてしまいます。

図7 脚が1本折れるとテーブルは倒れてしまう

脚が3本あるテーブルを、横帯取り返しを掛けられている相手に置き換えてみると、3本の脚は相手の両足と右うでに相当します。

体勢不十分な相手はなんとか体を支えるために右うでを畳につこうとしますが、それをすくい上げることで支えが無くなった状態(脚が3本あるテーブルのうち1本が折れた状態)となってしまいます。そうなると、バランスを崩して倒れるテーブルのように、技を掛ける方の体にさらに乗り上げてしまい、身動きが取りづらくなってしまうのです。

さらに、技を掛ける方が相手の下半身を両足で持ち上げる(テーブルの残り2本の脚を折る)ことで、相手の動きは技を掛ける方に完全に支配されてしまう(テーブルを持ち上げることすらできなくなる)のです。

横帯取り返しにおいて、相手の左うでをすくい上げることがいかに重要な役割を持っているか、ご理解いただけたでしょうか。

4.この記事のポイント

今回は数ある柔道の寝技の中でも基本的な、不利な体勢から一気に形勢逆転して相手を押さえ込める、横帯取り返しについて取り上げました。

この技は複雑な動きがなくシンプルであり、ポイントの正しい理解と反復練習によって誰でも身に付けることができます。まずは両手で相手を引き付けたり、相手の右うでをすくい上げて体勢を崩したりといった、技に対する各ポイントをしっかり理解するようにしましょう。その後、日々の稽古による反復練習を重ねることで、徐々に自分のものになっていくと思います。

最後に横帯取り返しの重要ポイントを再度おさらいしておきます。

  ・自分の右手で相手の左ひじ部分を握り、自分の左わき下の空間に引き込む
  ・相手の首後ろに自分の左手を差し込み、相手をしっかり自分に引き付ける
  ・自分の右手で相手の後ろ帯を取り、相手の体をさらに自分に密着させる
  ・支えようとする相手の右うでを、自分の左うでで下からすくい上げる
  ・自分の両足を使って相手の下半身を宙に浮かせる
  ・自分の両手両足を右に傾けて相手をひっくり返す
  ・自分の右足を相手の左ひざの内側に置き、逃げようとする相手を止める
  ・腰をひねって足を入れ替え、横四方固めで押さえ込む

次回も寝技を中心とした、知っておくと有利な技をお伝えしていきます。