伝説の柔道家が得意とした強烈な関節技!腕がらみを習得!

今回は柔道の長い歴史の中でも史上最強と言われている伝説の柔道家・木村政彦先生が得意とした、腕がらみ(うでがらみ)という技を紹介したいと思います。

腕がらみはブラジリアン柔術(柔道の寝技における基本的な返し技!横帯取り返しを習得!を参照)では”キムラロック”の名前で知られており、プロレスや総合格闘技、世界各国の軍隊格闘術においては、”ダブルリストロック”、”チキンウィングアームロック”等とも呼ばれています。

この技の特徴は『幅広く応用することが可能な関節技』である点です。

今回は相手も自分も立ち姿勢の場合に絞って解説しますが、お互いに寝技でもみ合っている時や、横四方固めで相手を押さえ込んでいる時にも使用することができる、非常に便利な技です。

先日紹介した帯取り返し(立技からいきなり寝技で押さえ込む!帯取り返しを習得!を参照)と比較すると、技を掛けた際の回転の仕方等はかなり似ていますが、腕がらみの場合はお互い立った体勢から相手のひじ関節を動かないようロックしてしまいます。

そして回転後、押さえ込みに入った時点でひじ関節をしっかり極めている(怪我をしない程度に通常とは逆方向に曲げている)状態となります。

つまり、帯取り返しが押さえ込みのみで相手を制する技であるのに対し、腕がらみは押さえ込みとひじ関節の極めを両方使って相手を制する技なのです。

この腕がらみという技は、帯取り返しと同様に、立ち技が苦手な人でも身に付けることができますし、最初にひじ関節の動きをロックしてしまうため、強引にパワーで制圧せずとも相手を寝技に引きずり込むことが可能です。

さらに最終的にひじ関節を極めることから、頑張って押さえ込みを維持する必要もなく、すぐに一本勝ちを取ることができます。

正に一撃必殺の技というわけです。

この技を覚えておくと試合で非常に有利になると思います。決して派手な技ではありませんが、その抜群の破壊力は数階級上の相手にもきっと通用するはずです。

最強の柔道家も使用したこの技を是非身に付けていただき、その威力を体感してほしいと思います。

(2019.10.14追記)
この腕がらみは現在、
際ルール(通常の柔道の試合ルール)においては、反則となることが判明しました。(公財)全日本柔道連盟が発行している、『2018年~2020年 国際柔道連盟試合審判規定』の第10条および第18条にその旨が記載してあり、仮に通常の柔道の試合で使用した場合、『指導』または『反則負け』を受けるとのことです。そのため、本記事は「柔道では禁止技だけど、こうした技もあるのだな。」といった参考程度に見ていただけると幸いです。本件お詫びし、追記いたします。

(2020.7.8追記)
腕がらみが”キムラロック”と呼ばれるようになったのは、当時ブラジルで世界最強と謳われ、ブラジリアン柔術の基礎となったグレイシー柔術の生みの親でもあるエリオ・グレイシー氏(1913~2009)を、木村政彦先生がこの技で倒したことが起源とされています。エリオ氏はこの技で腕を脱臼してしまうのですが、参ったを打たなかった(自ら負けを宣告しなかった)その精神力と闘志に、木村政彦先生も観衆も大いに感動したと伝えられています。

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1.腕がらみとは?

腕がらみについて説明していきます。今回もまずは技を掛ける際の一連の流れを紹介します。

左右2方向からのパラパラ動画を観て、どのような動きをしているか、目に焼き付けましょう。また、この技は関節技ですので、最終的にどのように相手の腕を極めているのかについても、よく観察してみてください。

腕がらみ
パラパラ動画 腕がらみの一連の流れ その1
腕がらみ
パラパラ動画 腕がらみの一連の流れ その2

腕”がらみ”という技名の通り、技を掛ける方はまず両腕を相手の右腕にからめ、右ひじ関節の動きをロックしているのが分かるかと思います。腕がらみが成功するか否かは、この動作を素早く正確に行うことにかかっています。

相手は右ひじ関節の動きをロックされることにより、技を掛ける方から逃れられなくなってしまいます。相手の右腕1本に対し技を掛ける方は両腕をからめていますので、相当な剛腕でない限り振りほどくのは至難の業です。

そこから帯取り返しとほぼ同じ要領で相手を回転させます。回転させた後は押さえ込みの体勢になっているのですが、自分の右ひじを少し上げることで相手の右ひじ関節が極まります。よって、数十秒間頑張って相手を押さえ込まなくても、簡単に一本勝ちを取ることができます。

実際私自身もこの技をよくくらっていましたが、一度ひじ関節を固定されてしまうと後は一切抵抗できなくなります。脱出不可能となり、技を掛ける方の動きに合わせて回転することしかできなくなってしまいますので、特にこの技を得意とする相手と練習や試合をする際は、非常に警戒していました。

ところで、この技を練習する上で1つ注意点を挙げておきます。それは回転した後に無理矢理ひじ関節を極めようとしないことです。

ひじ関節が強烈に極まる技ですので、力いっぱい掛けると最悪の場合相手のひじが脱臼してしまいます。ですので試合はともかく、練習では無理にひじ関節を極めることだけは絶対にしないでください。

柔道は怪我がつきものであるとはいえ、防ぐことができた怪我を実際にしてしまうというのは、相手も自分も気持ちの良いものではありません。

柔道は格闘技ではありますが、創始者・嘉納治五郎先生の説いた”自他共栄”の精神の通り、相手を敬い共に成長していくことが何より大切です。相手がいてくれるから自分も成長できますし、自分という存在があるからこそ相手も成長できるのです。

この技を練習する前に、普段から相手を思いやる気持ちを持つよう、常に心がけるようにしてください。

2.腕がらみの掛け方とポイント

それでは、腕がらみの掛け方とポイントについて、技を掛ける方が左組の場合で説明します。上のパラパラ動画も参考にしながら順に読み進めていってください。

まず技を掛ける方は、左手で相手の右手首をつかみます。その後、左手を引いて相手を引き出しながら自分の右手を相手の右肩越しに回し、自分の左手首をつかみます。腕をからませる作業はこれで完了です。下の図1のようになっていればOKです。

腕がらみ
図1 腕のからませ方

次に相手を回転させるのですが、帯取り返しのように真後ろに倒れるのではなく、下の図2のように少し左側(相手から見ると少し右側)に体を傾けながら倒れるのがコツです。そうしないとからめている腕と自分の体がぶつかってしまい、うまく回転することができません。

腕がらみ
図2 自分の体を左に傾けながら後ろに倒れる

一方、下半身の動きは帯取り返しと同じです。自分の左足を右足に近づけるとともに、右足のすねで相手の左太もも内側を一気に押し上げます

右ひじ関節をロックされ自由を奪われている相手は、技を掛ける方の動き(後方への倒れ+下半身の押し上げ)により、前方に倒れるざるを得なくなります。帯取り返しのように強引に耐えようとすると右のひじ関節や肩関節を負傷してしまうため、どうしても技を掛ける方の動きに従うことになります。

回転を終えた時点で押さえ込みに入っている状態となりますが、最後に右ひじ関節を極めにいきます。下の図3のように自分の右ひじを右手を支点として上方向に少し回転させるだけで、相手の右ひじ関節は簡単に極まってしまいます。

腕がらみ
図3 相手の右ひじ関節を極める

このまま我慢していると右ひじが脱臼しますので、相手はほぼ間違いなく”参った”を打つはずです。これにより一本勝ちを得られるというわけです。

『1.腕がらみとは?』でも述べましたが、柔道の練習においてはくれぐれも関節技を強引に極めすぎないよう気を付けてください。試合では審判が近くで見ていますが、練習では指導者が身近にいないことも多いものです。

感情的になったりふざけたりして相手につまらない怪我をさせないよう、十分注意してください。

3.腕がらみの鉄則

最後に、技の理解度と威力をより高めるため、腕がらみの鉄則についても説明しておきます。『2.腕がらみの掛け方とポイント』で説明した、相手の右ひじ関節を極める動きに焦点を当ててみましょう。

回転した後、自分の右手を支点に右ひじを上げることで、相手の右ひじ関節が極まってしまうのでした。実際にやってみるとよく分かるのですが、技を掛ける方はほんの少し右ひじを上げるだけで簡単に相手の右ひじ関節が極まります。

この理屈を考える上で、下の図4のように地中に根ざした大木の切り株を掘り起こす場面を想定してみます。

腕がらみ
図4 大木の切り株を掘り起こしたい

下の図5のように、スコップやシャベルで地道にザクザク掘り進める方法もありますが、掘り起こすまでに時間がかかりすぎますし、何より肉体的に辛いものがあります。

腕がらみ
図5 スコップやショベルで掘り進めるのは時間も体力もかかる

そこで、鉄棒を持ってきて一方の端を切り株と地面の間に斜め上から突き刺し、鉄棒のもう一方の端(切り株に差し込んでいない方)をゆっくり上方向に回転させていきます。

するとどうでしょう。下の図6のように切り株がだんだん持ち上がっていきます。一度では難しくても、何度も繰り返しトライすればやがて切り株は根っこごと掘り起こされるはずです。

腕がらみ
図6 鉄棒を使うことで比較的楽に切り株を掘り起こせる

これはいわゆるテコの原理を用いています。関節技に限らず、柔道の中ではよく使われる考え方です。ここでは小難しい話は省略しますが、要は図6にある鉄棒の接地点を支点とすることで、小さな力を大きな力に増幅させ、切り株を掘り起こしたというわけです。

これを腕がらみの動作に置き換えてみると、
 ・切り株・・・相手の右ひじ関節
 ・鉄棒・・・自分の右腕
 ・鉄棒の端・・・自分の右ひじ
 ・鉄棒の接地点・・・自分の右手
 ・鉄棒と切り株の接触点・・・自分の右腕と相手の右ひじ関節の接触点

に相当します。

自分の右手(鉄棒の接地点)を支点にして右ひじ(鉄棒の端)を持ち上げることで、切り株(相手の右ひじ関節)が掘り起こされる(極まる)というわけです。

右ひじ関節を極める理屈について、納得できましたでしょうか?切り株でなくとも、身の回りのものを使って一度実験をしてみると、より深く理解できると思います。

4.ポイントのおさらい

今回の記事では、伝説の柔道家・木村政彦先生が得意とした、柔道の関節技の中でも様々なシーンに応用できる腕がらみについて取り上げました。

この技は本当に強力です。両腕を相手の腕にからませてひじ関節の動きを完全に固定することさえできれば、一本勝ちは半分以上確定すると言っても過言ではありません。

ただし、この動作を素早く正確に行うためには、この記事を読んで数回練習しただけでは到底不可能です。何度もこの記事を見直し、何百回何千回と同じ動作を繰り返し、ようやく自分のものとなっていきます。

その頃にはここで紹介した掛け方よりもさらに効率的で効果的なやり方を、皆さん自身が編み出しているかもしれませんね。そうなっていただければ、私としてもとても嬉しいです。新しい発見やご意見がありましたら、是非教えていただければと思っています。

最後に腕がらみの重要ポイントを再度おさらいしておきます。

 ・左手で相手の右手首をつかみ、相手を引き出す
 ・自分の右手を相手の右肩越しに回し、自分の左手首をつかむ
 ・少し左側(相手から見ると少し右側)に体を傾けながら後方に倒れる
 ・相手を押さえ込む
 ・自分の右手を支点に右ひじを上方向に回転させ、相手の右ひじ関節を極める

次回も寝技を中心とした、知っておくと有利な技をお伝えしていきます。