立技からいきなり寝技で押さえ込む!帯取り返しを習得!

今回は柔道の立技が苦手な人向けに、立技からいきなり寝技で押さえ込むことができる、帯取り返し(引込み返し)という技を紹介します。

知っている人、実際に使っている人はあまりいないと思いますので、マスターすれば実際の試合でもかなり有利になると思います。センスや運動神経は全く必要なく、反復練習を継続できる方であれば誰でも習得可能な技ですから、是非普段の稽古や試合で試してみてはいかがでしょうか?

(2020.7.23追記)
この技を初めて見た時の衝撃は今でも忘れられません。それまで立技と寝技は全くの別物だと考えていましたので、立技からいきなり寝技に持ち込むことなど、考えもしなかったからです。立技と寝技を滑らかに繋ぐこの帯取り返しは、それまでの私の柔道に対する固定観念を取り払ってくれました。

その後数年間、現役選手として過ごしましたが、結果としてこの技を絶対の必殺技にまで昇華させることはできませんでした。しかしながら凝り固まった固定観念を突き崩し、「柔道はもっと自由な発想で捉えていいのだ!」という考えに至らせてくれたという意味で、私自身非常に思い入れのある技です。

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1.帯取り返しとは?

【帯取り返し】と聞いて、一体どれくらいの人がピンとくるでしょうか?

内股や背負投げのような誰もが知っている技ではなく、どちらかというとマイナーな技ですから、長らく柔道の修行を積んできた人であっても「技名しか知らない」とか「聞いたことすらない」という人も多いのではないでしょうか?

少年少女に柔道を教えるような町道場や、一般的な中学高校の柔道部では、よほど熟知した(マニアな?)指導者でない限り、この技を教えることはないと思います。国際大会等の柔道のトップレベルの試合においても、この技を使っている日本人選手はほとんど見られません。柔道発祥国の日本においても、あまり知られていないレアな技だと思います。

百聞は一見にしかずというわけで、まずは下記のパラパラ動画を観てみましょう。

パラパラ動画 帯取り返しの一連の流れ

これを観れば分かると思いますが、技を掛けた人は最終的に相手を寝技で(横四方固めに近い形で)押さえ込んでいるのが分かりますね。冒頭で話した通り、この『立った状態からいきなり寝技で押さえ込める』というのが、この技最大の特徴です。

最近の柔道界においては、国際的にも寝技の重要性がかなり認識されてきたようで、立技偏重の傾向から立技と寝技の連携を磨くことが重要視されるようになってきました。例えば背負投げで投げた後に上四方固めで押さえ込んだり、腕をしばって関節技に持ち込んだりといった一連の流れをしっかり身に付ける必要があるわけです。

しかしながら、立技というのは往々にして各自の運動神経やセンスといった感覚的なものに左右されやすいため、不器用な人ほど立技に苦手意識を持ちやすい傾向があります。

実際に当時の私がそうであったように、せっかく頑張って寝技の稽古を積んだとしても立技から寝技への連絡がなかなか上達せず、寝技を使う間もなく試合が終わってしまう(大抵投げられて終わる)人が多いのも事実です。そんな人にうってつけなのがこの帯取り返しというわけです。

立った状態からいきなり押さえ込みに行くわけですから、立技ができない人であっても習得できますし、そもそもあまり見かけない技なので、対戦相手のレベルにもよりますが試合で掛ければかなりの確率で相手を押さえ込むことが可能です。

しかも技を掛けた際の勢いによっては投げによる一本勝ちも取ることができますので、この技を知っているだけで技のレパートリーを1度に2つも増やすことが可能となります。

2.帯取り返しの掛け方とポイント

それでは、帯取り返しの掛け方とポイントについて、技を掛ける方が左組の場合で説明します。上のパラパラ動画を観ながら読むとイメージしやすいと思います。この技は色々な派生形があるのですが、ここでは基本的な形に絞って見ていきましょう。

まず、向かって左側の相手の右えりを左手を使って引き下げ、相手を前のめりにさせバランスを崩します。この時、相手は下を向くまいとして抵抗しますから、それに負けないようしっかり右えりを引っ張って相手の頭を下げさせましょう。

ここでは左手のみで相手を崩していますが、相手の抵抗する力が強い場合は自分の体重や両手を使っても構いませんし、自分の体をわざと横(読者側)にスライドさせながら右えりを引き下げてもOKです。

とにかく相手の重心を崩すことが、この技をマスターするための前提条件となります。これはセンス云々ではありませんから、普段の稽古やウエイトトレーニング等、努力で習得可能です。

技を掛ける方はすぐに右足を前に出して中腰の体勢になり、右手で相手の後ろ帯を取りながら右ひじで相手の背骨(正中線)に体重を掛けて押さえつけ、相手を起き上がらせないようにします。右ひじと右ひざで相手の胸を挟み込むイメージでやると良いでしょう。

この時、右ひじの位置が相手の正中線からずれないよう注意します。下の図1,2では、自分の前腕軸と 相手の正中線が平行になっているのが分かるかと思います。

図1 自分の前腕軸と相手の正中線の関係 (良い例)
図2 自分の前腕軸と相手の正中線の関係 (良い例)

このとき、下の図3,4のように、自分の前腕軸が相手の正中線に対して左右にずれてしまうと、自分の体重を上手く相手に伝達させることができず、せっかく右えりを引いて相手を崩したにも関わらず、相手が起き上がってしまい技を掛けることができません。

無理矢理相手を制御することもできなくはありませんが、自分の体重に加えて必要以上に大きな力を掛け続ける必要があり、体力面から見ても非効率的です。

図3 自分の前腕軸と相手の正中線の関係 (悪い例)
図4 自分の前腕軸と相手の正中線の関係 (悪い例)

相手を前かがみの状態にしたまま、正中線を基準にしてその体勢をしっかりキープさせることを意識してください。

次に、図5のように左手を相手の右えりから離して右わきをすくい、右かたの後ろに当てます。左手を離した際に相手が起き上がってくるようでは、まだ右ひじによる相手の制御が甘い証拠ですので、しっかりと正中線に沿って右ひじに体重を掛けるようしましょう。左手で右わきをすくった際、相手の力が強くて動きを制御しにくい時は、左手で右かたの後ろの道着を握っても良いでしょう。

繰り返しになりますが、相手の正中線に沿って右ひじに全体重を掛け相手を前のめりにさせたままキープすること、左手で右わきをしっかりすくっていることが重要です。

図5 左手で相手の右わきをすくう

次に下半身の動きに注目します。尻もちをつくような感じで自分が思いきり後ろに倒れます。すると、相手と一緒に後方回転をするような感覚で、相手もろとも後ろに回転し始めます。

回転する際は、自分の左耳を左かたに付けるように首を左に傾け、右側頭部と右かたを畳に付けるようにしましょう。こうしないと自分の首を痛める原因になりますので、十分注意してください。

同時に、図6のように左足を右足に近づけるとともに、右足のすねで相手の左太もも内側を一気に押し上げます

図6 右足のすねで相手の左太もも内側を押し上げる

前のめりに崩された相手に対し、尻もち+右足の押し上げによって生まれる強烈な回転力を掛けることで、相手は前回り受身をするように勢いよく回転します。回転し終わった時には自分が上、相手が下のポジションとなり、横四方固めで押さえ込んでいる状態となりますので、そのまま押さえ込みましょう。

3.帯取り返しの鉄則

最後に、技に対する習熟度をより高めるため、帯取り返しの鉄則についても踏み込んで説明しておきます。『2.帯取り返しの掛け方とポイント』で強調した、相手の動きを両手で制御することに再度注目してみましょう。

まず、相手を前のめりにしたまま、両手を使ってしっかり組み止めることで、相手は自分と一体化、つまり相手は技を掛ける方と同じ動きをせざるをえなくなります。そこに自分が尻もちをつきながら右足を押し上げることによって、相手にもそれに匹敵する回転力が掛かり、体勢不十分な相手はそのまま前方に回転するのでしたね。これは技を掛ける方が生み出すエネルギーが相手に無駄なく伝わっているからこそ、出来るのです。

分かりやすい例として、公園にあるシーソーを考えてみましょう。通常シーソーの台はまっすぐな固い鉄等でできており、下の図7のように一方に500mlペットボトルを載せた状態で、もう一方に体重100kgの人が勢いよく飛び乗ると、ペットボトルは上に飛び上がります。鉄は簡単には曲がりませんから、100kg分の押し上げるエネルギーがペットボトルに無駄なく伝わります。

図7 鉄製のシーソー台ではエネルギーが伝わる

このとき、シーソーの台が壊れやすい段ボール製だったとしたらどうでしょう?さきほどと同様に一方に500mlペットボトルを載せ、もう一方に体重100kgの人が勢いよく飛び乗ると、下の図8のように台はすぐ折れてしまい、ペットボトルを上に飛び上がらせることができません。つまり、せっかく100kg分の押し上げるエネルギーがあっても、それがペットボトルに伝わらず無駄になってしまうというわけです。

図8 段ボール製のシーソー台ではエネルギーが伝わらない

相手と自分をシーソー台に見立てると、相手の動きをしっかり制御している場合は、自分の生み出すエネルギーを伝えることができますが、制御が甘い場合はエネルギーが無駄になってしまいます。相手の動きを制御し自分と一体化するという帯取り返しの鉄則がいかに大切か、ご理解いただけたでしょうか?

4.今回のまとめ

今回は数ある柔道の技の中から、寝技への連携が容易な帯取り返しについて取り上げました。

この技はセンスや運動神経が必要ない反面、相手の重心を強引に崩す練習や、自分の体重をうまく相手に伝達して制御する練習を積む必要があります。相手を回転させる為に下半身の動作にも習熟しなければなりません。全体を通じて強引さやパワーが必要な技ですが、これらは稽古すれば誰でもできるようになりますから、是非あきらめずに取り組んでみてください。

最後に帯取り返しの重要ポイントを再度おさらいしておきます。
【技を掛ける方が左組の場合】
 ・相手を前のめりにし、バランスを崩す
 ・右手で相手の後ろ帯を取り、右ひじを相手の正中線に沿わせ体重を掛ける
 ・左手で相手の右わきをすくう
 ・尻もちをつきながら、右足のすねで相手の左太もも内側を一気に押し上げる

次回も寝技を中心とした、知っておくと有利な技をお伝えしていきます。